しつけ(訓練、トレーニング)なんて、必要ない

柴

題名を見て、びっくりされた方も多いことでしょう。

実はかなり昔、私が思っていたこと事です。

犬のことがメインで書いていますが、ネコちゃんのことも書いていますので、最後までおつきあいいただけるとありがたいです。

家庭犬だから

以前のトレーニングって、ビシッと飼い主の横につかせたり、服従させるようないわゆる服従訓練が主流でした。

だから私は、こんな風に思っていました。

  • 「ショーや何かに出るわけでは無いんだから、トレーニングなんて必要ないよ」
  • 「リードを引っ張るって言ったって、コントロール出来るし」
  • 「吠えるって言ったって、そんなに困っていないし」
  • 「嫌なことをさせるために、労力を費やす必要があるの?」

そんな感じで、しつけをビシッと入れている人を、冷ややかに見る一面もありました。

  • 「クレートトレーニング(ケージに入ってもらう練習)?だから???」
  • 「分離不安?トイレやお風呂の前でじっと待っているの、すごく可愛いじゃん?」

何がいけないの?お高くとまってさ!そう思いませんか?

「そうそう!」と思ってこの記事を読んでいる方こそ、読んでもらいたい記事を書こうと思います。

そんな面倒なことをしたくて、飼い始めたんじゃ無い

そう、動物が好きで、動物に癒やされたくて飼ったのに、そんな飼い主も動物も、ストレスがかかるようなことをさぁ。

まあね、そりゃあ、飼い主にピタッと付いて歩いたり、無駄吠えしなかったり、待合室で静かに待てる犬なんて格好いいだろうし、自慢だろうね。

でも、良いよ。私は私で、楽しみたいだけだから。

別に私は、困ってないから。

私も、そんな飼い主でした。

動物側の気持ちまで、思いを巡らせようとしていなかったのかも知れない。

私が、獣医師になった頃

私は、一般診療をメインとする動物病院の獣医師です。動物が好きで、しっかり飼いたくて、動物のことを知りたくて、獣医師になりました。

私が獣医師になった二十数年前は、噛みついたり暴れる犬や猫たちが当たり前でした。いかに噛まれずに、スキを見て押さえ込むか。そんなスキルを身につけなければ、診療が出来ない時代でした。

当然、口輪やカラーを連日のように使い、口輪さえ出来ない子は、死角から近寄り紐をかけ口を縛り、羽交い締めにして、さらにその上から口輪やカラーを付けていました。それが当たり前であり、日常でした。

代診時代は、そんな扱いを、ずっと続けていました。

いつの頃からか

私は元々、他の先生方と比べ、噛まれたり引っかかれたりすることは少なく、ケガも滅多にしませんでした。多くの獣医師がケガ自慢をし、こんなに大きなケガをしたと言い合っていました。私ももちろん昔は、ケガをしていましたが、それでも見せるほどのケガをした経験は、数えるくらいしか無く、「逃げるのが速いから」なんて言っていました。そんな中で気がつけば、動物を観察している自分に気づくようになりました。だから逃げるのも速かったのですね(笑´∀`)。

動物の嫌のサイン(Sign)。立ち入ったらいけないライン(Line)。そんなことを。

診療を続けていくうちに

一般診療の獣医師として続けていくうちに、このまま、戦っていく診療、不意を突く診療で良いのかと、疑問に思い始めました。

嫌なことをするから、もっと動物病院嫌いにさせている。でも、動物病院では嫌なことをするのが当たり前。

頭の中で、ぐるぐる葛藤する日々でした。

そして、嫌なことをされていると思わせないように努力しようと、変わっていったのです。

私の考えるトレーニング

例えば、『動物病院に行くのは、苦手』と言うのが世間一般の常識なのでしょうが、実は当院では、当たり前では無いのです。

基本、動物病院が苦手な子は少なく、例えば待合室は他のワンコがいたりするので苦手だけど、診察室に入ると安心するなんてタイプの子もいます。すごく好きすぎて、散歩の途中に必ず寄る、もしくは寄りたがるという子達がたくさんいます。待合室でもわれ先に自分が呼ばれないか、ルンルンの気持ちでソワソワしている風景も、しばしば見られます。

診察台に乗るのが苦手だった子も、診察台に慣れる訓練に飼い主さんにがんばって来てもらうことで、「乗せてくれ♪」と逆に催促する子も、たくさんいます。自分からジャンプして乗る大型犬もいます。

ここでは、診察室や診察台への馴らし訓練の話をしましたが、もしかしたら、たったこんな事と思われるかも知れません。しかし昔は、診察室に入るのに引きずらなければならなかったり、診察台に乗っても体重を量っていると直ぐに飛び降りてしまったり、そんな子ばかりでした。これって良いことでは無いですよね。

それを、そうでない状態に気持ちを持って行ってあげられることは、動物にとっても、ストレスどころか楽しい遊びの一つであり、飼い主さんにとっても、動物病院へ連れて行く事が、苦痛になりません。そして私たちも診察が、とてもしやすいのです。

馴化訓練(じゅんか くんれん)

慣らすことにより、嫌なことと思わせない。決して無理矢理ではありません。状況によっては、むしろ楽しいと思わせる。そんな訓練です。

ただ、馴化訓練と思って、「怖がる犬を、いきなりわんこたちがいっぱいのドッグランに放流!」なんてことをすると、逆にトラウマになってしまい、さらに犬嫌いにさせてしまいます。

馴化訓練は、適切な指導が出来る方についてもらって行った方が良いですし、きちんと動物の楽しそうなサインをくみ取ってすすめていって下さい。

当院では、かかりつけの飼い主さんと、動物病院への馴化訓練に積極的に取り組んでいます。

動物病院に行くなんて、年に何回も無いから

せいぜい、ワクチン、フィラリア、狂犬病。そんなくらいのことだから。そんなことのために、しょっちゅう動物病院に行って、慣らす訓練をする手間をかける必要も無いでしょう。面倒くさぁ~。そう思いますよね。

でも、将来病気になったら?

だい・ダイ・大嫌いな動物病院に、無理矢理連れて行かなくちゃいけないのです。すっごく、かわいそうですよねぇ~。

病気治療のためにがんばって連れて行きたいけど、車の中ではキュンキュン(猫ちゃんは、ニャンニャン)鳴いてしまうし、待合室では待てないし、他の犬には吠えるし(猫ちゃんの場合は、待合室で鳴き続けたり、固まってしまったり)、診察台に乗せるのも噛みついて大変だし。

さらに、心臓病なのに動物病院に来る度に心臓に負担がかかってしまう。だから、診察に連れて行くことで状態が悪化して死にそうになってしまうから、診察に連れて行けないなんて事になったら、治療をあきらめるのでしょうか。

とても、つらいですよね。

最近は、医療の発達と予防、そして食事や生活環境が良くなり、長生きするようになりました。その為、最期を迎えるにあたって、何かしらの病気とおつきあいしながら天寿を全うする子達ばかりです。将来のことを考えても、動物病院に頻繁に通う可能性を頭の中に入れ、最期まできちんとという意味で、計画を立てていただいた方が良いと思います。

だからこそ、治療にあたる私たちとしましても、動物病院嫌いの子たちを作りたくないのです。

家でのケアーも

例えば、目のケガをした時に、目薬治療になります。ですが、目薬をすると噛みつくと言われる飼い主さんも、昔は居ました。当院では、今はそう言う子は、ほとんどいなくなりました。

内服治療しか治療方法が無い病気の時に、食欲が落ちてしまい、食事に混ぜることも出来なくなった時、薬を喉の奥に入れる時に噛みつかれるのであれば、薬をあげることも出来ません。その薬が命綱だったとしたら・・・。

体のどこかをケガしたかも知れない時に、普段から信頼関係が築けていないと、噛みつかれてしまい、どこをどうしたか見ることさえ出来ません。

大切なわが子に、何も出来ないもどかしさ。いざという時には、何も出来ないなんて・・・。

その時になって始めようとしても、そこからの訓練では結構ハードルが高く、難しいです。なぜなら、治療をしなくちゃいけないと言う必死感で、どうしても動物に無理強いをさせてしまうからです。慣れる訓練には無理強いは禁止行為です。ですから、この時点から練習を始めるのは、大変難しくなるのです。

だからこそ、余裕がある、何も無い時に、無理強いをせず、練習をしておかなければならないのです。楽しいゲームとして。日常の一コマとして。当たり前のことのように。

将来、「元気で長生き」のために

本当に初歩的なことが出来ず、寿命を縮めさせてしまうのって、心が痛みませんか?

普段から密に接し、観察し、ケアー出来るようにするためにも、いろんな訓練が必要なのです。

私が考えているものは、ビシッと叱りつける「しつけ」ではありません。彼らが素直にやりたくなるようなトレーニングなのです。

飼い主さん側が、やり方に慣れないうちは大変かも知れません。でも、コツを得ればとても楽しいんですよ。その中には、動物の気持ちをくみ取る訓練も含まれますから、そのスキルを身につけると、もっともっと仲良くもなれるのです。と言う事で、動物を飼う楽しみが一つ増えるのです。

こう言うことに詳しい獣医師や、もしかかりつけの先生が詳しくなかったら、是非、トレーナーさんについてもらった方が良いです。

ワクチン、フィラリア、狂犬病の予防をするのが当たり前というのと同じで、トレーニングも当たり前なのです。こころのワクチンと言われ、今、その考えが広まっています。だから、それにかかる費用は、必要経費と思って欲しいです。

ちなみに、当院のかかりつけの方(ワクチン、フィラリア、狂犬病やその他の予防やケアーなどを受けていただいて、普段からホームドクターとして通って下さっている方)には、無料で行っております。問題行動のカウンセリングや、難しい訓練や特別な内容になってくると有料のこともありますが、普段の一般的な内容は無料です。有料になることはめったにないですし、その際は事前にご相談させていただきますので、お気軽にお越し下さい。

あちこち動物病院を掛け持ちされている方には、提供していないサービスです。その理由は、あちこち行くことで他の動物病院で何かされたことで、当院での訓練が進まなくなることがあるからです。ご協力お願いいたします。

猫ちゃんも

ここ近年は、多くのネコちゃんの飼い主さんも、動物病院に慣らす訓練に来て下さっています。

なので、大好きにはならなくても、動物病院や他人がすごく苦手で、ひっかいたり噛みついてくるような子は、かなり少ないですよ。犬の声がしても、「奴ら、来ないし」って、言う練習にもなるのです。

犬ほどは慣れないにしても、一般の動物病院では、診察や治療が出来ないレベルのネコちゃん達もたくさんいるのが現状ですが、当院のかかりつけの子では、そう言う子はほとんどいなくなりました。と言う事は、これらの成果が実を結んでいるものと思っております。

また以前は、麻酔の覚めかけにパニックになって飛び起きる子がたくさんいましたが、この数年は、そんな子は記憶に無いくらいです。慣れているからこそ、麻酔の覚めかけに恐怖心が襲ってくることも無いようで、穏やかに目覚めます。

また、ネコちゃんの飼い方も、間違っていることがあります。

一つの例として、噛みつき行為に対しての対策も、みなさんが考えているようなしつけをしてしまうと、間違った方向に行ってしまい、ネコちゃんを凶暴化させてしまいます。猫ちゃんの精神状態を追い込んでしまうのです。とても恐ろしい状況になります。そうすると、飼い続けるのが困難になってしまうケースもあります。

きちんと動物の特性に合った飼い方をしないと、いけません。

一度、この様な状態までになってしまった場合は、信頼を取り戻すために、とてつもない努力が必要で、薬物治療を必要とするケースもあります。そうならないために、正しい飼い方を学び、些細な変化でも相談していただける関係を構築していただけると助かります。

治療では無く、予防が重要なのです。

社会化訓練の必要性を、広めたい

私自身、毎日、悶々とする日々です。

一生懸命に子犬や子猫が来た時に、「社会化訓練の必要性」と、「それに最も適した社会化期と言う時期はとても短いこと」、だから「今の時期に頑張らなくてはならない事」を伝えても、伝わらないもどかしさ。また、社会化期が過ぎた子でも、社会化訓練の継続の必要性がある事なども。

この内容にしっかり耳を傾けて下さる方と、スルーされる方の違いって、何なんだろう?本当に大切な事なのに、伝わらない。

しかし、ふと気づいたのです。すっかりその気持ちを、忘れていたのです。そういうことか!!!

と言う事で、初心に戻って、この記事を書いてみました。

私も、「トレーニングしなきゃね」といくら言われても、「何を言っているんだ?家庭犬だし」と思っていた飼い主の一人だったのです。でも、こうやってたくさんの動物たちと付き合っていくうちに、どうして必要なのかを自分自身で実感したのです。その体験を元に、みなさんに伝えることで、共感して下さる方が10%でもいたならば。まあ、あの当時の訓練とは全く違うものではありますが、そのニュアンスの違いも、一般の方に伝え切れていなかったのでしょうね。私の力の無さです。

そう思って書いてみました。

まとめ

いかがでしたか?

しつけって言う言葉は、私は嫌いです。いわゆるビシバシってイメージを受けるから。でも、私が考える(一般的に言われる)しつけは、そう言うニュアンスでは無いです。

彼らが、人間社会で無理なく過ごせるための場作りと、考えていただけませんか?

動物たちも人間も、双方がハッピーになれる社会を目指して。


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