福岡周辺で、ウサギ・ハムスターを診察する動物病院が減っているのをご存じでしょうか。
そのため当院に、少し離れた地域から来院される方が増えています。
そこで、皆様にお伝えしたい事があります。
ウサギ・ハムスターの診察は、とても大変
ウサギ・ハムスターの診察はとても大変です。
その理由を書かせていただきます。
スキルは必要なのに、その部分の評価をされることはありません。
特殊な技術だからこそ、別途料金で診察される状態にも変化しつつあります。実際、関東などではそのような体系になりつつあります。
来院時は、すでに重症化
ウサギさん・ハムスターさんは他の動物以上に重症化して来られるケースがとても多いです。
その理由は、ウサギやハムスターの生態に関係しています。
ウサギやハムスターは犬や猫と違い、食物連鎖のピラミッドの中では、捕食動物になります。
そのため体調不良を見せてしまうと食べられてしまうので、ギリギリまで頑張る習性があります。
- 元気がない。
- 食欲がない。
- 動きが悪い。
- 目ヤニが出ている。
- おしっこの出が悪い。
- お腹を床に付けてのびている。(ウサギに多い)
- よだれを垂らしている。(ウサギに多い)
このような状態の時は、もう末期の事もあります。特にウサギは診察台に乗ったり触るだけでショック死してしまう事もあります。
お仕事の都合がつかないのも分かりますが、体の異変に気付いた時は相当悪いと思って下さい。
猶予はありません。
そのため当院では、診察を希望されても当院の診療スケジュールと合わず先の受診になりそうな場合は、応急的に診察してくれる動物病院への受診をお薦めようなアドバイスをさせていただくことが、しばしばあります。
「困っているので無理をしてなんとか診てください」と言われることもあります。
我が子を何とかしたいお気持ちは、とてもよく分かります。
しかし、今の時代は労働者を守ることが法律で義務付けられています。
獣医療は今までブラック労働環境が当たり前でした。そのためこの業界から離れていく人が後を絶ちません。人手不足は慢性化しており、いま志強く小動物臨床の世界にとどまってくれている人たちを大切にし、守っていくことは雇用主としての責任だと思っております。
そのためこちらのスケジュールを変えることは出来ないので、当院の規定時間内に早退や有給休暇などでお時間を作っていただける方のみ対応せざるを得ないのです。
不当に雇用することにより、違法および労働環境が悪化し雇用が継続できなくなると、診療を続けていくことが困難となります。
当院では法律を遵守し、当院で出来る範囲の獣医療提供をさせていただいております。
それは、いま既にかかりつけで来てくださっているウサギさんと飼い主様を守るためです。
目の前の子を救えない事に対する批判のお気持ちも分かりますが、私はかかりつけの患者さんを守ることが第一優先だと考えております。
新規の患者様においてもこれを強要することは出来ませんので、私たちの範囲を受け入れてくれる方は私たちの出来る限りで一生懸命向き合い診察させていただきます。
扱いが大変
ウサギは、とてもデリケートです。
先ほども書いた通り、ちょっとのストレスで死んでしまう事があります。
少しの力で骨折したり、皮膚や内臓もとてももろいため裂けやすく、事故につながるリスクがとても高いです。ビックリして保定しているタオルの中でのけぞったり、足でけったりしただけで折れることもあるのです。
普段から犬や猫の扱いはとても慎重にはしていますが、その何十倍も神経を使います。
それでも事故を防ぐことが出来ない場合もあります。
特殊な知識が必要
犬猫の診察が出来るからウサギやハムスターも診察出来るというわけではありません。
またウサギやハムスターのペットとしての歴史は他の動物に比べ浅いです。
そのため分かっていない病気もたくさんあります。
ウサギ・ハムスターを専門的に診察している動物病院と、ウサギ・ハムスターも出来る限りの範囲で診察対応している動物病院では、情報更新も違います。
飼い主様にはその見極めは難しいかと思います。
当院は専門的にうさぎを診察している動物病院ではありませんが、それでも私がおすすめする動物病院より当院の方が良いと頼って下さる方もたくさんいます。
私たちは十分な診察は出来ないかもしれませんが、少しでも力になれたらという気持ちで、こころ折れそうになりながらも診療を継続しております。
診療を辞める理由
ウサギやハムスターの診察はとても大変です。
そして、かなり重篤化して来院されるケースも多いです。
その状態からは、十分な診療が出来ないケースがあります。
またウサギ・ハムスターは先ほども書いたように、特殊な知識が必要です。
飼い主様は、ウサギやハムスターのスペシャリストを望み、そのレベルの診療を希望されています。
そのため、少しでも力になれる事があればと診察していた先生方が、自分ではかえって迷惑をかけてしまうと思って、次々と辞めていくのです。心が砕かれてしまうのです。
ウサギやハムスターの診察をしている動物病院を守っていかないと、診てくれる獣医師がいなくなってしまいます。
正直私自身も、診察をいつ辞めてもおかしくないです。
ですが、私まで診察しなくなるとウサギさんたちが途方に暮れてしまうという思いから、私の持っている知識の範囲でご納得いただけるのであれば、力になりたいと思って診察をしております。
お願い
何度もお伝えさせてください。
ウサギやハムスターの診察はとても大変です。
みなさまにご納得いただけるような診察をするためには、専門知識と技術が必要です。
そこまで望まれる飼い主様のお気持ちも分かります。
大切なわが子にベストな診療を受けさせたい気持ちは、理解出来ます。
ウサギさんハムスターさんの専門の獣医師にたどり着けたら良いとは思いますが、そうでなかったらそもそも診察すら受けられないという状態の方が、ウサギさんハムスターさんにとっては不幸な事では無いでしょうか?それも許されないのであれば私はうさぎの診察を止めます。何度もやめようと思いましたが、私たちが出来る事で恩返ししていこうという気持ちで奮い立たせています。
当院ではベストな診察は出来ませんが、一般的な診察はしており、その範囲も承知して下さる飼い主様には満足していただけています。
他院で診ていただくことが出来て、それで治っている状態でもっと良い獣医師はいないのかと探されている飼い主様には納得していただける自信はありませんし、それでガッカリされるようであれば私もとても悲しいです。
そう言った事が重なるようでしたら、私もウサギ・ハムスターの診察は止めさせていただこうと思っております。
実際そのような事があったわけではありませんが、このように近隣の先生方がどんどんうさぎの診療を止められ、期待値の高い飼い主様が当院に来られるようになった時に受け止めきれず、また、飼い主様とウサギさんハムスターさんに悲しい思いをしていただきたくないために、この記事を書かせていただきました。