室内飼育や病気予防が当たり前になり、近年動物たちの寿命が延び、高齢の犬猫が増えました。そうすると、今まで問題になることがあまり無かった病気の一つとして、歯周病が注目されるようになってきました。
歯垢、歯石、歯周病の区別
多くの方が歯石を心配しますが、問題になるのは歯垢です。歯の表面の歯石をペンチなどで剥がしても何の意味もありません。歯周ポケットの治療が重要と言われるようになってきました。
歯垢(プラーク)
歯垢はご飯の食べカスに細菌が繁殖したものです。
歯石
歯垢をそのままにしてしまうと、カルシウム沈着(Ca沈着)を起こしてしまいます。そうすると石になってしまい、歯磨きでは取れなくなります。
歯周病(歯周炎・歯肉炎)
雑菌がさらに繁殖し炎症を起こすと歯周病になります。そのまま放置すると、歯槽骨(顎骨)を溶かしてしまいます。意外とこの事実をご存知ない方が多いのです。
骨を溶かすことにより、
- 鼻に開通
- 鼻水や鼻血、くしゃみの原因
- 誤嚥性肺炎
- 目の下あたり
- 目が飛び出たり
- 目の下の頬辺りから膿や血混じりの膿が出る
- 下顎
- 軽い力で骨折
など。
いずれにしても、バイ菌感染によって起きていることなので、わかりやすく言うと腐った状態です。
腐った状態で顎の骨折をした場合は、治療が難しいと考えてください。
元々骨の中の雑菌には抗生物質は届きにくいのです。そんな状態で病気の巣がある状態を想像してみてください。薬は効きづらいですよね。また雑菌はバイオフィルムと言って膜を作り、よりしっかり守りに入り定着してしまいます。
そもそも普通の骨折の手術でも、内臓の手術と比べると無菌レベルにかなり慎重にならないといけないのです。雑菌によって折れた骨がくっつくと想像し難いのがわかっていただけると思います。
歯周病が引き起こす病気
先ほど書いたように直接的な歯や周辺組織によるトラブル以外にも、たくさん命を縮める病気はあります。重複する部分もありますが、まとめてみます。
- 鼻水、鼻血、くしゃみ
- 眼球突出
- 目の充血や目やに
- 目のショボショボ(羞明:しゅうめい)
- 頬から排膿
- 顎の骨折
- 肝炎
- 歯周病菌が肝臓に飛んで、健康診断で数値異常が見つかったり、膿瘍を肝臓内に作ってしまったり、慢性肝炎になったり、突然急性肝炎を引き起こし亡くなってしまう子もいます。
- 頻繁に遭遇します。
- 心臓病
- 心内膜炎、弁膜症など
- 腎臓病
- その他の多臓器の感染症
- 皮膚病の悪化
- 食欲のムラ
- 高齢になり食欲にムラがあると思ったら、実は歯の痛みから食べる速度が遅くなったり、食べるのをあきらめて衰弱死してしまうケースも日常的に当院では遭遇しますが、獣医師も歯が原因と気づいていないケースが多いです。
- それらによる体力の低下
- 認知症(可能性)
- 近年、人の医療で言われるようになりました。
- その他様々な疾患の原因になると考えられています。
予防
歯磨きがまず思い浮かぶと思います。もちろん大切です。根本的に歯垢を付けないように日々の歯磨きは重要です。
すでに歯周病になっている場合は、一刻も早く先に治療をしっかり行ってから、歯磨きやケアをしましょう。お口を触ることがとても痛くなっている子が多いです。トレーニングどころではありません。痛くて触れないので口をもっと触れなくなり、その間に病気は進行していきます。現在はそのようにアドバイスさせていただいております。
子犬子猫や若いうちから口を触るトレーニングが出来ていると、歯磨きだけでなく、飲み薬の投与にも良いですよね。
治療
全身麻酔をかけ、歯周病治療をします。歯石除去ではありません。
そのため、無麻酔の歯石除去では見た目の石を除去しただけなので、歯周病は進行します。
無資格者・有資格者問わず、無麻酔の歯石除去をお勧めする施設は「良心的な行い」のように見えますが、無知なる虐待と無意味なことです。病気を進行させる行為ですので、そのような施術を選択しないことをお勧めします。
- 日本小動物歯科研究会ガイドライン(無麻酔下での歯石除去の危険性、歯科処置の危険性)
人間は確かに無麻酔で治療をしますが、じっとした状態をキープ出来ます。動物たちが、もし出来たとしても、心地よくじっと出来るわけではありません。私達だって心地よいわけではないですが、我慢していますよね。動物達は今している行為を理解出来ないため、私たちの行為が次第に口周りを触れない子にしてしまいますし、繰り返しますが虐待行為ですので、絶対にしないでください。
ぐらついていない歯であっても歯根膿瘍を起こしている場合は、積極的な抜歯をしないと全身の敗血症を起こすことがあります。ぐらついている歯を抜けば良いとか、自然に抜けるまで待てば良いということではありません。骨が溶けるのを待っているわけです。「自然に抜けるのを待ちましょうと言ってくれる」のは良心的ではありません。
歯の部位により、顎骨折や、鼻腔と口を繋げてしまい飲食物が鼻に行きやすくなり誤嚥性肺炎のリスクを高めます。
日常ケアにも力を入れながら定期的な全身麻酔によるチェックとケアを行いましょう。
歯石除去と歯周病治療後のタイミングから、これからおすすめする商品を使い予防に取り組みましょう。
ケア商品のご案内
そのように歯周病はとても怖い病気です。定期的な全身麻酔での歯周病治療だけ行ったとしても、少しは進行をゆっくりすることはできるかもしれませんが、せっかくの効果を最大限に発揮する事はできません。
今回、動物病院専用で、専門医の先生が考案なさったサプリメントを取り扱うようになりました。乳酸菌のようなものとは異なります。
雑菌の繁殖を抑え、雑菌が作るバイオフィルムも破壊するそうです。
人にも良いとのことなので、自分の飼っている動物と私自身もこれから使って実験してみます。私自身が夜の歯磨きの後は、ナイトリンスをしないと朝口の中のねばつきで気持ち悪いのですが、ナイトリンスは殺菌剤なので口腔内常在菌を殺してしまうため抵抗があったのです。だから、常在菌に悪影響を与えないこの商品には期待大です。その会社が扱う商品の中では、一番の売れすぎ商品とのことです。
コスト的にも1本で約1ヶ月(小型犬・猫)くらいだそうで、税抜2,000円(税込2,200円)ご案内させていただきます。
寝る前に直接口に入れるのが一番効果的ですが、直接口に入れられない場合でも使用出来ます。
1週間で口臭改善効果を体感出来ます。
(2023年09月29日追記:約10日間使って下さった飼い主様から、3日くらいで臭いが気にならなくなったとのご報告をいただきました。私たちも本日マスクを外して嗅いでみましたが、ほぼ気にならなくなりました。以前は、マスクをしていても診察室内に口臭が充満していました)
歯周病の治療には全身麻酔下での治療が優先されます。そのため当院でも年齢は問わず、動物と体調をチェックして実施しております。しかし何らかの疾患で全身麻酔のリスクが高い場合に何も出来ないのでは無く、この商品を使うことで進行を少し遅らせる事が期待出来るのでは無いかと思います。
詳しくは獣医師もしくは愛玩動物看護師、および動物ケアスタッフよりご説明させていただきます。