第40回 動物臨床医学会 記念年次大会に 参加して来ました

2019年11月22日(金)~24日(日)まで病院を休みにさせていただき、大阪で行われる学会に行って来ました。

行動学(しつけ)のことは、よく記事にするのですが、普通の勉強をしても改めて書くことも無かったので、今回はじめて列挙してみました。改めて書いてみると、すごいですね!獣医療って多岐にわたりますからね。そりゃあ、頭痛もする訳だわ(笑´∀`)

内容

  • 子猫を迎えたら、子猫を迎えた飼い主に伝える行動学(行動学)
  • ペットの繁殖問題 日本の現状と海外との比較(繁殖学・遺伝性疾患・動物福祉)
  • 1歳未満からの歯科治療(歯科)
  • 臨床現場から見えてくる犬の歯周病の特徴(歯科)
  • 行動学 症例検討(行動学)
  • 犬の膿皮症の上手な治療法ー内用・外用療法(抗菌薬、ステロイドなど)からスキンケアのコツまでー(皮膚科)
  • 膝蓋骨内包脱臼ーお皿が外れます以外の説明はできていますか?ー(整形外科)
  • 無麻酔歯石除去の弊害と正しい歯石除去(歯科)
  • 犬と猫の炎症マーカー活用法ー特徴を理解し使いこなせるようになろうー(血液検査)
  • 感染症から動物を守る、自分を守る(感染症)
  • 明日からもっとカルシウムを測定したくなる!カルシウム異常の意義と診断(血液検査、腫瘍学、他内科学)
  • 犬と猫の高齢性認知機能不全(行動学)

子猫を迎えたら、子猫を迎えた飼い主に伝える行動学

11月15日(金)の19:00~20:30は、行動学分科会のベーシックセミナー(ポイント対象)で、藤井仁美先生の講演と、グループに分かれグループディスカッションを行い、会場参加型で発表する形式でした。

*ポイント対象=獣医総合臨床認定医の認定セミナー

子猫特有の問題行動と、普通に聞かれる質問に対して、追加質問としてはにを質問し、問題行動が怒る理由は何が考えられるか、どのようにアドバイスするかというような内容でした。

行動学をきちんと学ばずにアドバイスをすると、間違えた助言となってしまいます。私も、行動学を学び始めて、追加質問やアドバイスも変わってきました。

普段行っていることではありますが、今まで以上に濃い聴取とアドバイスが出来るかと思います。

『猫は小さな犬では無い』これは、どの分野においても言われることですが、行動学も専門的に学ばないと危険です。決して犬よりも楽(そんなことはありません)だとか、犬感覚で飼育したり、猫という動物を学ばす飼育するのはやめた方が良いです。

当院では、いっしょに学ぶお手伝いをさせていただくためにも、情報の更新を行っていきます(過去の助言は、既に古いものとなっている可能性はあります)

ペットの繁殖問題 日本の現状と海外との比較

11月16日(土)の9:15~10:15は、生殖器・繁殖分科会のアドバンスセミナー(ポイント対象)で、元日本大学の教授、津曲茂久先生の講演でした。

みなさんが普段おっしゃっているブリーダーとは、専業繁殖者やペットショップ兼繁殖屋や、趣味的および一般繁殖者これが日本の現状

本来のブリーダーはシリアスブリーダーで、上記の方とは別です。そして、一般の方がシリアスブリーダーに知り合える可能性は、かなり低いです。ショーに出しているだけの自称シリアスもたくさん居ます。

諸外国では、最高出産年齢の規定と繁殖サイクル、生涯出産回数の制限、帝王切開の回数制限などが決められています。

日本の専業繁殖者(一般的に日本でブリーダーと呼ばれる人たち)ではこれらのことが守られておらず、虐待繁殖が行われています。

でも、多くの飼い主さんの入手ルートは、ここなのです。

  • インブリードなど、近交系数の問題
  • 毛色の禁忌・制限とその理由
  • 遺伝性疾患
  • 遺伝子検査の落とし穴 などなど

だから、これらの知識が無い人が、繁殖をしてはいけないのです。

素人繁殖は、不幸な動物たちを作ってしまいます。生業としているだけで知識が無い人は、素人繁殖どころか、もっと大きな問題を抱えています。

とある犬種は、諸外国から凍結精液の提供をしてもらえないくらい、日本のブリーディングの酷さは、悪い評価をされています。

そして専業繁殖者さんが、もっと諸外国から馬鹿にされないような医学的知識を持ち、プライドを持って正しいブリーディングをする世の中になるために一般の飼い主達が、 それらを選択しないとような知識を持っていかなければなりません。

1歳未満からの歯科治療

11月16日(土)の10:30~11:30は、歯科分科会のベーシックセミナー(ポイント対象)で、網本昭輝先生による講演でした。

ワクチンの時はもちろん避妊去勢手術の時まで、もしくはもっと前の段階で定期的にチェックをして行く必要性を学びました。子供のうちであれば、一般の動物病院で出来る事がいっぱいあります。

なので、なるべく動物病院にマメにかかるようにしましょうね。

みなさんに発信出来るような情報以外の診療テクニックなどは、これ以降の項目でも、省略します。

臨床現場から見えてくる犬の歯周病の特徴

11月16日(土)の12:15~13:15は、藤田桂一先生による講演でした。

先生が日頃診療をしていてのデータ報告で、歯周病になりやすい歯や、採食するものによる歯垢・歯石付着の違い、歯周病からの疾患などの話でした。

行動学 症例検討

11月16日(土)の14:45~15:45は、行動学の症例検討を聞きに行きました。3名の先生が実際の現場で診療をした症例の報告をされていました。

診察のすすめ方、類症鑑別(診断名の列挙)、アドバイスの仕方など改めて勉強になりました。

また、フロアーからの質問も有り、いろんな考え方を学べました。

犬の膿皮症の上手な治療法ー内用・外用療法(抗菌薬、ステロイドなど)からスキンケアのコツまでー

11月16日(土)の16:30~17:30は、皮膚科分科会のステップアップセミナー(ポイント対象)を、村山信雄先生の講演で、正しいスキンケアの勉強をして来ました。

抗菌薬の乱用で薬剤耐性菌が世界で問題になっているものの、諸外国ではそれから積極的に取り組まれ、ずいぶん減ってきているようです。

しかし日本は依然として、その注意喚起された当初と全く変わっていないとのこと。抗菌剤の使用を最小限にしつつ、膿皮症を治すコツなど学びました。

膝蓋骨内包脱臼ーお皿が外れます以外の説明はできていますか?ー

11月16日(土)の17:45~18:45は、運動器分科会のベーシックセミナー(ポイント対象)で、森淳和先生による講演でした。

跛行(ちゃんと歩けない状態)してる原因が本当に膝蓋骨脱臼なのかや、なぜあの位置に膝蓋骨(お皿)がある必要があるのかなど。

また、小さいうちから出来ることなども学びました。

無麻酔歯石除去の弊害と正しい歯石除去

11月17日(日)の9:00~11:15は、歯科分科会のパネルディスカッション(ポイント対象)で、本田洋先生、加藤都先生、高橋香先生の講演でした。

無麻酔の歯石除去は社会問題になっております。獣医師および獣医師で無い人たちが無麻酔で歯石除去を行い、歯の破折、顎骨折、脱臼、椎間板ヘルニア、死亡などの事故がたくさん起きています

実際、歯冠部と言われる見えている部分の歯石だけを取っても全く意味が無く、歯肉縁下と言われるいわゆるポケットの部分の歯石を取らなくては全く意味が無く、『歯石除去という言い方』が世間の共通語となっていることから、このような間違いが起きるのであって、歯周病治療と言おうという提案もありました。

見た目がきれいになっているからこそ、飼い主さんは、事の重大性に気づきにくくなり、重度の歯周病になってしまって顎の骨が溶け骨折してしまう症例も少なくないそうです。

私はSNSで、無麻酔の歯石除去をしている人の記事を読んだことがありますが、「歯の内側の歯石は、気にしなくてよい。舌が動いているからあまり歯石もつかないし問題を起こすことは少ない」とのことでした。

間違えた内容にもかかわらず、発進力が強すぎるのがとても問題です。『発進力が強い』『フォロワーが多い』から、正しい情報とは限らないのです。ネットには、こう言うことがあふれているのです。

歯の内側の歯石を取らなくて良いなど、そんなことはあり得ません。私の場合は、特に犬歯の内側の歯槽骨が極端に解けているケースにしばしば遭遇します。内側の施術が出来ない言い訳として、このようなことをまことしやかに言う事は許されません

このような事例を集めて、今後、農林水産省に報告書をあげるとのことでした。

獣医師があたかも麻酔をかけて治療をしたがっているかのような誤解がありますが、私達は動物のために正しい治療をする知識を、こうやって日々学んでいるのです。だからこそ、動物の健康を守るための国家資格を持った私達の情報を信じて欲しい。

獣医師も含め、無麻酔の歯石除去が規制されることを祈っています。

犬と猫の炎症マーカー活用法ー特徴を理解し使いこなせるようになろうー

11月17日(日)の11:45~12:45は、 玉本隆司先生の講演でした。

犬のCRP、猫のSAAの使い方と評価方法です。これらの数値は、富士フイルム社製の機械を持っていて、なおかつSAAは富士ドライケムimmunoと言う機械が無いと測れません。

当院には、immunoをかなり早い段階から導入しているため、SAAだけでなく、甲状腺のホルモンや副腎皮質ホルモン、肝機能検査のTBAなども院内測定が出来ます。

通常は外注検査になるので1日以上結果が遅れます。特に副腎皮質機能低下症(アジソン)などは、すぐに診断し治療に取りかからなくてはならない緊急性のある病気ですから、院内で測れるのはとても安心です。

感染症から動物を守る、自分を守る

11月17日(日)の14:15~15:15は、スタッフセミナーで、堀木研子先生の講演でした。

スタッフセミナーというのは動物看護師向けのセミナーなのですが、この時間帯で聞きたい内容が無く、動物看護師さんに混ざって感染症の勉強をしてきました。

明日からもっとカルシウムを測定したくなる!カルシウム異常の意義と診断

11月17日(日)の15:45~16:45は、内分泌分科会のステップアップセミナー(ポイント対象)で、西飯直仁先生の講演でした。

健康診断をしていて、高Ca血症の症例にしばしば遭遇します。症状を示しているもの、そうでないもの、様々です。

それらのデータをどのように解析し、どれくらいの頻度でモニタリングしていくかなど、除外診断なども含めて勉強しましたが、Caの解釈はかなり難しいなと言うのが実感です。

犬と猫の高齢性認知機能不全

11月17日(日)の17:00~18:00は、行動学分科会のアドバンスセミナー(ポイント対象)で、小澤真希子先生の講演でした。

犬だけで無く猫の認知症の症例の紹介も有り、診断の仕方、治療などの更新が出来ました。

認知症の対応は、内科ではありません。行動学なのです。

みなさんは、私が行動学の勉強をしていることに関してピンとこないかもしれませんが、動物が高齢化社会を迎えた今、この知識はとても有用です。

薬物治療だけでなく、行動的なアドバイスも必要です。そして、漢方やサプリメントなどを上手に使うことで、案外上手くコントロール出来ている経験を、私自身、複数持っております。

一人の動物が子供のころから最期を迎えるまで見届けた経験は、臨床経験が長い中堅以上の獣医師でないと持ち合わせていません。 私は、子供のころからおつきあいしていた子が変化していく姿を見守り、その子その子の性格に合わせた提案などもさせていただいております。

元気なうちから、来て下さいね!

行動学を勉強している獣医師は、このような分野にも強いんですよ♡

まとめ

という感じで、学会の講習は同時進行で複数行われていて、同じ時間帯に聞きたい内容がかぶる中、泣く泣くチョイスして、今回はこんな勉強をしてきました。直前になって、やっぱこっちに行く!と変えることは毎年のことで(;^_^A

あ~もう、頭はパンパンですよ。

だから、書き留めたシラバスを見直しながら復習しています(笑´∀`)

また来年もしくは他の学会では、別の分野の情報も、もちろん定期的に更新していますよ。

今回は行動学と歯科学が比較的ウェイトを占めてしまいましたが、獣医師の知識が多岐にわたっているのは、分かっていただけましたか?

だから、こんな事も知らんのか!?って 、獣医師さん達をあまりいじめないで下さいね(^_^)

みんな頑張っているんですよ。大好きな動物たちのために。

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