当院では飼い方アドバイスが功を奏して、椎間板ヘルニアの発生はとても少なくなってきています。
しかし、ふとした拍子に無理な姿勢を取ってしまい起きてしまう事もあります。
一般的な治療
グレードにより異なりますが、いずれにしても安静にする必要があります。
また、内服治療の場合は痛みや炎症を抑える薬としてNSAID(非ステロイド系鎮痛消炎剤)やステロイド剤、またその他の補助的な薬やサプリメントを投与する事が多いです。
重度になるとオペが必要なケースもあります。
当院での取り組み
ペット漢方を積極的に取り入れております。しかしそれらは保険適応外になるため、保険診療を希望するかペット漢方を希望するか選ぶことが出来ます。
実際は保険適応外であってもペット漢方を希望される方が多く、治療の症例数も増えてきました。
症例1
「昨日から急に、なんとなく走り回らず元気がない気がする。外出して戻って来た時にいつも興奮気味にお迎えをするのだが静かにしていた。今朝は尾を下げ腰を丸め、抱っこするときゃんと鳴いた」との事で来院。
来院前夜から急に寒さが増したタイミングでした。
診察にて、足幅が狭くなっており、背中を丸めていました。温かいところを好む傾向も出ており、風湿を取り除いたり体を温めるペット漢方を組み合わせ処方しました。
すると次の日には尾をあげるようになり、4日目の来院の時には2本足で立とうとしたり安静にするのが大変だというくらいにまで回復しました。
発症から8日目の来院では、全く普通の状態になり症状は消失しました。
そこから少しずつ減らし、通常の養生に必要な漢方を戻していきました。
症例2
以前からペット漢方を飲んでもらっていました。この子は、過去何度か椎間板ヘルニアの症状を繰り返し、安静と鎮痛剤で治療して来ました。
ある時やはり急に痛みに襲われたのですが、次の日にどうしても来院できず、通常のペット漢方の投与と安静を守っていました。
いつもならその状態で数日で痛みが緩和する事は無かったのですが、来院されたときにはかなり軽減しており、その時の体質を診察させていただき、必要なペット漢方を加え調整させていただきました。
すると、みるみると元気になってくれました。
現在もその他の治療で養生して下さっていますが、そういえば今まではたまに発症していたのですが、痛みを訴えることがここしばらく無いなと、いま書きながら改めて思い返しています。
効果が早い
通常の治療では痛み止め投与していただいた場合に、次に与えるタイミングぐらいになるとまた痛みが出たりつらいといわれることもしばしばあったのですが、ペット漢方の場合は、落ち着いてくるまでの期間がとても短く感じます。
気虚(気の不足)であったり、瘀血(血の巡りが悪い)であったりと様々な原因によって起きてきますが、同じ椎間板ヘルニアであってもその子その子によって原因が違うのでその体質にアプローチ出来る方剤を選択していきます。それら原因にアプローチするという考えなので、対処療法とは異なるのです。だから効果が早いのだと思います。
実際私がペット漢方を飲んでおり、日々の体質に合わせ、毎日毎日微調整しながら体感しております。
その中で、椎間板ヘルニアの時によく使う何種類かの方剤も飲んでおり、何だか足の調子が悪いなという時に夜飲むと、次の朝には少し楽になっています。
漢方は長く飲まないと効果が得られないのか?
そんなことはありません。西洋医学と同じで、即効性があるものもじっくり飲まないと効果が出ないものも様々です。
例えば、体を温める漢方などはしばらくするとポカポカしてきます。また、血虚などは血が満たされてくるまでに時間がかかるので、効果判定には期間が必要でしょう。西洋医学でも痛み止めなどは即効性があり、貧血の治療をする薬などは少し時間がかかると思います。
しかしいずれにしても、よく言われる「1か月は飲まないと、効果が実感できない」と言う事はありません。何かしらの変化は多少なりとも体感できます。
ずっと飲んでいるのに少しの変化もない場合は、処方が間違えている可能性があります。
弁証論治
西洋医学的な診断ではなく四診(望診・聞診・問診・切診)をしっかり取り、方剤を決めていきます。アトピーだからこれとか、インフルエンザだからこれ、更年期障害だからこれといった事ではなく、毛のツヤ、体表面の温度、水分の状態、脈、舌、メンタルの状態、水分摂取の傾向、排せつの状態などなどもっともっとたくさんの情報を気になる症状だけでなく、全身くまなく観察したり尋ねたりして体質を見極めていきます。そして、今一番必要なことは何で、どのタイミングでこの体質を治療していくかなど治療計画を立て、投与し、また見せていただいて反応を観察していきます。
そのため、初回だと40~50分、再診でもスムーズにいって30分以上時間がかかります。
体質が分かったら、それを飲み続けるの?
病院などで漢方をもらっている方の話を聞くと、長期にわたって調整が無く、同じものを飲み続けているケースが多いですよね。
漢方には整体観といって、自分の体質だけではなく様々な周りの状況に影響を受けているという考えがあります。そのため季節に応じた養生が必要です。暑い時期と寒い時期、湿気の時期には処方が変わる可能性がありますし、ストレスなどが生じるとまた違ってきます。カウンセリングをしっかり受けられるところで処方を受けた方が良いと思います。
飲めばよいというわけではありませんし、漢方は体に優しいから副作用が無いというのも間違いです。
私たちは出来るだけこまめにチェックし、処方調整するように努力しております。体調によっては、電子カルテにしっかり入れなくても、チェックだけさせていただく場合もあります。
漢方診断
当院ではペット漢方をメインで使用しております。和漢方は現在はまだほとんど使用しておりません。
その理由としては、ペット漢方は研究会がありたくさんの症例に使用され、報告も上がっております。当院も毎年症例報告をしております。そのようなバックグラウンドがあるため、治療に困った時に相談しやすく調整がしやすいため、ペット漢方をメインで使用させていただいております。
現在、当院のかかりつけの方は気が付けば、かなりの割合でペット漢方を投与されています。
ただ、決して安いわけでは無いので、私も無理にはおススメしておりません。それでも続けたいとおっしゃって下さる方が多く、一緒に治療効果を喜んでおります。
西洋医学がメインの動物病院ですが、西洋医学ではアプローチ出来ない部分であきらめなくて良いというのが、これらのメリットだと思っています。
体を温める治療というのは西洋医学ではリハビリなどではあっても、飲み薬では無いと思います。漢方では体を温めるのか冷ますのかなどとても大切にします。西洋医学とは違った概念を取り入れることで治療の幅が出来ます。