当院は、中医学および漢方など東洋医学に力を入れている数少ない動物病院です。犬、猫、ウサギ、ハムスターでの処方実績があります。
漢方診断(中医学的診断)
西洋医学以上に、四診(望診・聞診・問診・切診)をしっかり取り診断を行うために、とても時間がかかります。
動物の全体像を観察し、飼い主様への問診に始まり動物の様子を見ながら追加質問をし、ていねいに体全体を触って体表面の温度や脈、舌、被毛や皮膚、目の輝きや涙、立ち姿勢、音、臭い、精神状態など様々な観察を行います。特に当院では獣医行動学を取り入れているため、飼い主様が気づけていない動物たちのメンタル状態のチェックには力を入れており、またアドバイスの為の引き出しをさらに増やせるように、日々学びを更新しております。さらに整体観の概念から、周りの環境とのかかわりなどの聴取もしっかり行っております。(前述の動物たちのメンタル状態も整体観の概念に含まれます)
逆に言うと、西洋医学よりさらにていねいに行わないと体質のチェックが出来ずに、より良い薬や治療の提案が出来ないのです。
漢方を飲んでも効果があまり見られない、もしくは漢方を飲んでいるのだから良いに決まっていると言うプラセボ効果の状態をよく耳にします。しかし実際は、体質にきちんとアプローチ出来ていない場合が多いです。
当院でもこれらの情報を取るためにしっかり診察をしておりますが、人と違って直接患者である動物に聞けるわけでもないので得られる情報が少ないため、実際処方をしてみてさらに観察をしていただいて調整をすることで、より良い治療へとつながるケースもあります。
またそれらを行ってもしっくり来ない時は、さらに詳しい先生へ当院からセカンドオピニオンとして質問をして、回答を待ってから飼い主様にお伝えするケースもあり、お時間を要することもございます。
漢方診断には、
- 何を観察したら良いかを知る事
- 家でのしっかりした観察と報告
- 診察室でていねいに、くまなく全体を触ったり観察する事
- それらから得られた情報で、より近い弁証と治則を導き出す
- 家でしっかり投薬していただく
- 食事や睡眠、温度管理、ストレスなど環境改善をしっかり行う
- 観察を行い、それ以外にも気が付いたことを、動物病院に報告する
- など
とても重要になって来ます。それら無くし、薬の効果も引き出せません。一緒にご協力よろしくお願いいたします。
漢方診断の際の動物病院選び
漢方診断が出来る動物病院を選ぶ際のポイントとして、
- 飼い主様が気にしていること以外のことも、しっかり問診を取ってくれる
- 食事や飲水、排泄の状態なども毎回必ず聞いてくれる
- 動物のメンタルの状態のチェックをしっかりしてくれる
- 体全体を、くまなく見てくれる(臭いや体のそれぞれの部位の温度チェック、毛ヅヤ、涙、唾液、舌、脈なども)
- 窓口で薬だけ定期的に渡されるのではなく、最低でも1ヶ月に1回は再診の指示を出して、チェックしてくれる など
興味はあるけれども遠方で難しいと言う場合は、これらのポイントで探してみるのも良いかと思います。
中医学アドバイザーとは
(以下、研究会ホームページより抜粋)
「中医学アドバイザー」は、動物病院での診療において中医学理論を活用し、ペットの健康維持管理を計画・実行する知識と技能を有する人材を日本ペット中医学研究会が認定する資格です。
- 日本ペット中医学研究会が定める中医学講座を受講し、中医学基礎理論や、動物病院でよく見られる病気に対する中医学での対処法についての継続的な学習を行っている。
- 実際に動物病院において、四診や弁証論治といった中医学の理論に基づく臨床経験を積み、相当数のペット達に対して中医学理論に基づいた診療を行っている。
- 日本ペット中医学研究会が定める中医学講座を受講し、中医学基礎理論や、動物病院でよく見られる病気に対する中医学での対処法についての継続的な学習を行っている。
これらを満たしている研究会会員を「中医学アドバイザー」として認定しています。
(以上、抜粋終わり)
また、国際中医師の受験資格が得られます。
⇒ 合格しました(詳しくはこちら):更新
取得者
中医学アドバイザーを取得されている先生は全国でもまだ51名しかおらず、福岡では当院を含め3件のみ(外来の受付を行なっている動物病院)です。(研究会の会員は416件:2022年4月19日現在)
福岡県の会員動物病院は、こちら(リンクへ)。
全国の会員動物病院は、こちら(リンクへ)
会からこのような素敵な盾をいただきました。
国際中医師
中医学アドバイザーは会の認定資格ですが、国際中医師と言う資格をご存じでしょうか?国際中医師は、中医学を学び仕事に生かすために取る方が多い資格です。漢方薬局の先生をはじめ、医師や獣医師でも取得する方がいます。資格取得のためには、既定のカリキュラムを終了しないと受験資格が得られません。こちらのペット中医学アドバイザーもその一つとして認められているため、私は受験資格を得ることが出来ました。そして現在、日本にまだ24人しかいない(研究会把握分)と言う、獣医師での国際中医師を目指して猛勉強中です。
ネットで調べると、合格率はかなり高いように書かれています。しかし誰でも受けられる試験ではなく、まずは一定の基準を満たすことが求められます。その上で3年間受験資格が継続できるため、その間に取得すれば合格と言う事になります。誰でも受験できるわけではない事に加え3年間と言う猶予が与えられている事を考えても、簡単ではないのは分かっていただけるかと思います。また試験は、2日間に及び、中医基礎理論、中医診断学、中薬学、方剤学、中医臨床学、臨床弁証論治の6科目です。最後の臨床弁証論治はカルテを筆記で仕上げなければなりません。難しい漢字だらけですが書けるか心配。そして、試験問題は人間対象の内容です。
と言う事でネットでかかれているよりは、かなりの難関です。
2022年4月現在受験料を調べてみると、18万円です(゜o゜)
頑張るしかないですね。すごいでしょ。でも頑張ります。
⇒ 合格しました(詳しくはこちら)更新:2023年1月現在29名(研究会把握分)
漢方の怖さ
漢方は体にやさしく副作用が少ない、自然なものは体に良いと思われがちですが、そんなことはありません。
正しい知識を用いて、漢方も中医学のお薬も使わないと、体に悪影響を及ぼします。実際当院のスタッフが、人間の病院で漢方を出され、体に合っていない為その旨を伝えたのですが、東洋医学的な診察ではなく西洋医学の延長での漢方の使い方だったため、どんどん方向性がかけ離れてしまい、体調を崩しました。そこで見かねて、私が止めさせました。
彼女の状態を詳しく聞き取り、ペット用の普段私が動物たちに処方しているものも加えて組み立てなおしたら、みるみる元気になりました。
今、人の医療でも漢方が流行って、病院で処方されることが増えてきています。しかしきちんと漢方や中医学の勉強をせず使われると、効果が無いどころかこのように体を崩してしまいます。またこれに関しては時間を取って記事にしたいと思います。
人間の保険医療においてもこのような事が起きる為、ペットではメンタルの状態など人間以上に聴取しにくいために、正しい弁証や治則を立てるのは難しいのです。
先ほども書きましたが、現在は私自身が診察を行い、状況によっては私の指導員の先生に助言をいただきながら、微調整しております。その為、何度か処方させていただいてしっくりこない場合は少し時間をいただきセカンドオピニオンさせていただいております。(注意:セカンドオピニオンとは、本来の意味は、医師や獣医師が次の医療を紹介する事で、患者さん自身が転院を繰り返すことをセカンドオピニオンとは言いません)
予防の大切さ
当院は、予防をとても大切にしております。未病、養生です。
行動の予防、病気の予防、体質の調整。その中の一つが中医学なので、当院で総合的に予防をされる方を応援し、その手助けの為に西洋医学的な予防に加え、行動学や中医学と言った情報更新に、常に前向きに取り組んでおります。
そのため予防をしっかり当院で行われている方を応援したくて、漢方診断料の部分の免除でサポートさせていただいております。
中西統合医療
当院では、西洋医学と中医学と両方の知識を持ち寄って診察を進めております。そのため、どちらかだけと言う概念は持っておりません。
西洋医学の代替えとして中医学を使うとか、また逆と言った考えではなく、それぞれのメリットとデメリットをうまく補填することで、高めると言った考えで取り組んでおります。
ワクチン接種もフィラリア予防と言った化学薬品による予防も積極的に行いますし、予防のための避妊去勢手術も積極的に推奨しており当院では実施率がとても高いです。また希望者には抗がん剤治療も他院と連携し行っております。
この子のために何かもう少し出来ることは無いのかとお考えの方に、プラスαの提案ができると考えていただけると助かります。
現在西洋医学的な治療を他院でおこなっているけれども、そちらをやめて東洋医学だけでなんとかしたいと言う問い合わせもいただくことがございますが、当院でも西洋医学での治療を行いながら中医学を取り入れているため、状況によっては今までの治療はかかりつけの動物病院で続けていきながら、私たちで出来るお手伝いをプラスαとしてさせていただく旨をお伝えすることもございます。
一つの動物病院で完結したい気持ちもご理解出来ますが、より良い医療を望まれるのであれば、人間の病院で全ての医療が1ヶ所で提案出来ないのが当たり前であるのと同じで、特殊だったり高度な知識になればなるほど分業が必要なことをご理解いただけると助かります。