獣医師ぴよちゃん、こんにちは。
今日は、どうしましたか?



先生、あのね。
最近よく、行動診療科って耳にするのですが、どんなことをしているんですか?



行動診療ってね、「飼い主さんが問題と感じる行動」をしっかり聴取して、その原因を探って治療をする“獣医療分野”なんですよ。
診察なので、
病気の問題が隠れていないか?とか、どうしてそのような行動が形成されたのか?など、問診を取っていきます。



へぇ~「しつけ」じゃなくて、診察なんだね。
具体的に、どんなことを聞いていくの?



私の場合は、日本獣医動物行動学会の問診票に書いてもらったものと、そこから想像できることを広げて、聞いていきます。
例えば、現在の年齢と発症時期がどうだったか、それからどれくらい経っているか。また徐々に悪化したのか、急なのかなども、ていねいに聞いていきます。
飼い主さんは急にとおっしゃっていても、実はその兆候に気付けていないだけのこともあるので、そこを見落とさないように時間をかけて思い出してもらいます。



また重要なのが鑑別診断といって、痛みだったりホルモンの病気でイライラが増していることもあるし、不適切な場所での排泄の場合は、さらに泌尿器系の病気なども除外します(中略)。認知症の初期で問題行動が出てくる子もいます。問題行動の診断の種類でも鑑別する必要があります。
稟告(飼い主さんがおっしゃる症状)から、考えられる病気をあげていき、ていねいに聴取したり、追加検査をしたりして、それらの可能性を消していきますし、それらが原因の時は、その治療に入ります。



1回で見つからないことも多いので、行動診療を継続しながら、鑑別診断を頭の中に浮かべながら進めていくんですよ。



普通の診察と変わらないんですね!



ぴよちゃん、いいところに気付いてくれましたね。
ありがとう♡
そうなの。内科や整形外科などの除外診断を行うのと同じように、行動診療科でも除外診断を行っていくので、特に一次診療の現場では、一般臨床のスキルがないと、診察できないんですよ。
私は行動診療専門でもなくて普通の診察もするし、それらの勉強も更新しているんですよ。



へぇ~、そうなんだね。



ましてや動物たちって自分でお話出来ないから、飼い主さんを通して聞き出さないといけないでしょ。それを具体的に飼い主さんが想像しやすいように、思いを巡らせて質問していくのです。
もちろんすぐに思い出せないってことが多いですが、ゆっくり考えてもらって思い出せることがあれば後でも知らせてもらえると、診断の精度が上がることもあります。



だからこそ問題行動って、ささいな異変でも感じた時にできるだけ早く来てもらった方がよいのです。思い出せなくなる前。そして、こじれてしまう前に。



みなさん、ネットの情報やいろんな助言を信じて頑張られているのですが、やればやるほどどんどん悪化したり、その他の複雑な要因が重なって、元の原因が分からなくなってしまうことも多いのです。そうすると、治療の精度が下がって、治せるゴールが変わってしまうことも多々あります。



他の病気と同じで、少しでも早い方が良いんですね。



そうなの。
そもそも、ホルモンの病気や認知症や痛みなどで起きている行動を、いくら『しつけ』しても難しいし、逆に、悪化させてしまったり他の問題につながってしまうことも想像できるでしょ?
怖いよね。



なるほど。
いま起きている状態だけで判断しても、的外れだったりや悪化させてしまう危険性があるんですね。



そうなんですよね。
そして近年では人間の精神科でも、心の病気とは言わず、「脳の病気」と言われるようになりました。
脳と言う一つの臓器の病気と考えると、やはり早期発見・早期治療になりますよね。そして医療技術の提供が必要なことも、分かってもらえますよね。



本当にそうですね。
ところで、トレーナーさんとの違いはどうなんですか?



トレーナーさんは、トレーニングをメインになさっている方が多いですし、診察行為は、獣医師の仕事です。つまりトレーナーさんは、診察や診断は出来ません。そのため、「分離不安」とか「常同障害」といった診断をしてはいけません。獣医師法違反に抵触してしまうのです。



たとえば人間の医療において「おたくの子は糖尿病だから、これがいいですよ」とアドバイスし悪化させてしまった場合は、法に抵触する可能性があるのは理解できますよね。簡単なアドバイスくらいであればまだしも、治療に強い影響を与える場合は、しばしばニュースになったりしますよね。



トレーナーさんには、
トイレトレーニングとか、
歯磨きトレーニングとか、
投薬トレーニングとか、
クレート(ハウス)トレーニングなどをお願いするのは、とても良いと思います。



へぇ~、先生ありがとう。
じゃあ、どうやって使い分けをしたらいいんですか?



ナイスな質問ですね!
特に問題を抱えていない場合で、これから将来に向けて、動物たちの不都合を減らしてあげたいと取り組む場合は、トレーナーさんがいいと思います。



「目薬が出来ない」とか、
「食欲が落ちた時に、口に薬を入れることが出来ない」とか、
「抱っこ出来なくて、診察台に乗せられない」とか、
「キャリーバッグに入れられず、連れてくるのに一苦労する」といった状態になる前にトレーニングをしておくと、将来、診察や治療で困ることが減ります。
そのような分野で、トレーナーさんと関わってもらうことをお勧めしています。



なるほど。
じゃあ、動物病院は?



問題行動と感じた時点で、獣医師による診察を受けて欲しいのです。
『病気の診断は、獣医師にしかできない』ことは先に伝えたとおりですが、それらの治療も獣医師の仕事です。ましてや、痛みだったり、内臓の病気だったり、脳の病気が原因の場合は、獣医師による治療が必要になるのは分かりますよね?



また、脳が疲労を起こしてしまっている場合は、“普通に出来るはずのことが、出来ない状態”になっています。些細なことに反応してしまったり、行動を強化するためにおやつを与えたくても食べてくれない状態では、トレーニングの成果も上がりません。
それらを、行いやすくするために投薬治療という選択肢もあります。
脳の機能異常を改善させたり、落ち着かせたりすることで、動物たちとの生活改善につながりやすくなります。



ただし、投薬だけすればよいのではなく、人のような認知行動療法や環境改善がとても重要です。動物では行動修正でや環境修正を行います。
ここが抜け落ちて、治療はしていても悪化してしまうケースもたくさんあります。人もそうですよね。



あとは、問題行動予防のための動物病院での取り組みもあります。
動物病院に連れてくるけれども、待合室で食べ物を食べて帰るだけなど、なにも感情を抱かないうちからそういうのをやっておくだけでも、後々の動物病院嫌いになるリスクを低くすることも出来ますよ。



先生。
とってもわかりやすかったです。
また、いろいろ質問させてくださいね。
行動診療という診療科目が、多くの飼い主さんや動物病院関係者に知ってもらえたらいいなぁ~って、ぴよは思います。



本当にそうですね。
ぴよちゃんも、一人でも多くの人に、伝えてね!
そしてまた、いつでも質問してね。



はーい!☆彡
まとめ(クリックして開いてください)
行動診療科で行うのは、病気の診察と治療。獣医師の仕事である。
問題行動は、飼い主さんが問題と感じる行動。
トレーナーさんは、診断も治療も出来ない。
問題行動と気づいたら、動物病院で診察を受ける。
問題行動も早期発見・早期治療が重要で、遅くなればなるほど、治療がうまくいかないことがある。(他の病気と同じ)
問題行動が発生する前から、いろんなトレーニングをすることで、出来ることや長生きの可能性が広がる。(ネットを見るより、トレーナーさんとの練習が良いと思います)








