*当院は、獣医行動プラクティショナー(日本獣医動物行動研究会)認定の獣医師が診察する動物病院です。
今年(2021年 6月27日〜2021年 9月25日)、アメリカのパデュー大学の獣医行動専門医の尾形庭子先生の猫の行動学のコースを受講し、主席(1番)で終了しました。
ちなみに、ここの獣医行動学のコース(今回やプラクティカルコースを含め3コース)は、すべて受講しています。尾形庭子先生は、日本で獣医行動学を学ぶ人間で知らない人はいないと言うくらいの先生です。
内容
今回は猫のショートコースと言う事で、猫の事を学びました。Webで受講し、最後にレポート型のテストを提出して評価していただく方式です。
猫の社会化の事や日ごろ起きやすいトラブルなどに、前もってかかりつけの動物病院としてアドバイス出来るスキルを学ぶものです。(行動の専門医としての勉強ではありません)
テストは、暗記する必要はないのですが、どれだけ事細かく講義の内容を聞いたか。また、日ごろの診療でどのようなアドバイスをするかなどの質問もあったため、その応用や日ごろの取り組みを問われるものでした。
参加人数
受講中は録画配信と言う事もあり、どれくらいの人数が受講しているのか知りませんでした。
最終テストの解答は共有のサイトに上げていき、一度答えたら修正出来ないものですが、他の方がどのように答えているのか見ることが出来る形式でした。そこで回答している人数は、54名でした。
運営会社の方に質問をしたところ、獣医師と動物看護師の内訳|
- 獣医師:35名
- 動物看護師:27名(合計62名)
と言う回答が返って来ました(これらの事をネットのUPすることは了承済みです)。合計62名と言う事なので8名の方は、最終まで行かなかったようです。
採点基準
- たくさん書けばよいと言うわけではない。書きすぎも減点対象
- 分かっていたとしても、相手にきちんと伝わらないような書き方では、加点されない(実際の現場でも、知識はあっても飼い主さんに伝わらないことがあるため、伝え方のスキルも採点基準に組み込まれている)
- 獣医師と動物看護師では、現場で必要とするスキルが異なるため、採点基準も異なる(獣医師の方がシビアに採点)
上の2つの採点基準はテストが終わってから知らされたので、これから2回目以降のコースを受けられる方よりは、今回の受講者の方がかなり不利な条件です。そのような事も含まれていたので、あそこはダメだったかな?とか、ここはきっと減点対象だろうななんて、ドキドキして、まあ、良くて「秀」いったら良いなぁ〜、悪くて「優」でありますように、「良」だったらかなり落ち込むな(「可」までが合格)って感じで、結果を待ちました。
テスト結果
私は100点を取ることが出来ました。1番です!!!
解説動画で、先生もかなり減点項目の事をおっしゃっていたので、本当に冷や汗だったのですが、減点されなかったんですよ( ; ; )減点無しなんて、嬉し泣き全開!
先ほども書いたように目標は「秀」を目指していて、悪くても「優」を取りたいなと思っていたところだったので、100点はさすがにびっくりしました。
100点を取れたのは、獣医師では私だけでした。他は動物看護師さんで1名いました。(獣医師はシビアに採点されています)
ちなみに基準をもう一度詳しく書くと、
- 79点以下は不合格
- Pass(可)80~85点
- Credit(良)86~90点
- Distinction(優)91~95点
- High Distinction(秀)96~100点(私はここ)
ちなみに秀を取った人数は、獣医師7名(私も入る)、動物看護師2名でした。(あえて不合格者の人数は質問してないので、わかりません)
そしてこのコースは、猫の行動学に興味がある獣医師と動物看護師のみが参加しているのです。そこを考えても参加者のレベルは一般の動物病院の平均よりも高いと言う事を理解していただきたいです。そんな中での、私の1番と言うのがどれだけ頑張ったか、わかっていただけると思いますヽ(^o^)丿
獣医行動学を学ぶ事で
行動学の分野はだれにとっても身近であるからこそ、どうしても簡単に見られがちです。誰でも知っていて、誰でも出来そうに思いますよね!これがそうでは無かった・・・。私がこの分野を真剣に勉強しようと思った際の気持ちも、そんなつもりは無かったのですが、学べば学ぶほど、学びが足りない現実に直面します。だから、普段たくさんの動物と向き合っているから「しつけ(現在はしつけとも思っていません)」の事なんてわかったつもりでいるなんて、本当に傲慢だったなと過去の自分を反省しています。
犬や猫を飼った経験があるのが無駄とは言いませんが、逆にその知識が邪魔をすることがあります。多くの方が認識している「いわゆる常識」が害である事すらあるのです。(かなり多いです)
「喜んでいる」「リラックスしている」と捉えられがちなボディランゲージが実はストレスサインであるなど、学ばなければ知ることが出来ません。経験上はほぼ皆さんが真逆のとらえ方をしてしまうので、動物たちを苦しめている事すら気づけず、動物が喜んでいると勘違いしてその行為を繰り返すと言う、とても恐ろしい事を多くの方が行っています。昔の私もそうでした。
獣医行動学や応用行動分析学(ABA)をしっかり学ぶ事で、私たちが常識と思っている世界が非常識であることに気付け、動物たちに無理強いしたりガマンさせるような飼い方をしなくて良くなります。現在も、大牟田市動物園のハズバンダリートレーニングのアドバイザーである青木あゆみ先生のABAのセミナーを受けています。分析学ではありますが、獣医行動学を学ぶ人間であれば、ほとんどの方が知っている先生です。
ネットや経験ではなく、学術・学問として学ぶ事で、出来るだけ動物の事を理解しようと努力をするようになりますし、お互いの不都合をどうやったら調整出来るかを必死に考えることが出来るようになります。
それがこの学問を学ぶメリットだと、現時点の私は思っています。(学びの過程でまた変わっていくかも知れません)
少し外れますが「YouTube動画は見ないほうが良い」と、当院に来られる方にはお伝えします。勉強熱心な飼い主さんほど見ていると言うのを診察室でも聞くため、どれどれと私も見た事がありますが、お勧めできる動画に巡り合えた事がありません。
猫の行動学を学んでいます
私たちはこうやって、猫の行動学を学んでいます。落ち着かせるためのなんとなくの声掛けなどではなく、どうして猫がこのようなことを選択しているのか、どうやったらストレスを最小にするために素早く診療を進められるかなど、猫の行動を観察し分析しながら日々変化させ、より良い方法を選択する努力を出来る限りでしています。(待ち時間の解消は現時点では難しいので、ご理解いただけると助かります。待つ事をストレスに感じにくい取り組みや提案をさせていただいております)
犬の来院も多い動物病院ですが、猫の行動学の知識においては、専門の先生を除いては、この近隣では一番学んでいます!と言えくらいになれるよう、これからも正しい学びを進めていきます。
他のVSJのコース
2018年に受講した『獣医師のみのコース』である、【動物行動学プラクティカルコース】の内容はこちらです。
下記以外にも、子犬のコースも終了しております。