漢方(国際中医師)や動物の扱い(やさしい保定、飼い方、しつけ)の知識 地域ナンバー1を目指し、学術更新をしております

飼い主さんにとって、言われたくないこと

最近、動物病院の先生って、とてもやさしくなりました。すごく飼い主さんに配慮するようになりましたね。その配慮って、動物側からすると良いことなのでしょうか。

フィラリアの投与期間を知らない飼い主さん

フィラリアの予防薬の投与推奨期間は、動物病院によって多少変わってきます。例えば手術のあとの抜糸までの期間がどこの病院でも一律ではなく、1週間とか10日とか2週間とかどれが正しいのかというのも、どれも正解であるようにです。

ただ、どう考えても3日で抜糸しないのと同様、フィラリアの予防は、蚊が居なくなって1(~2)ヶ月後までですから、8月や9月で終わることは、まずまずありません。

ですが、近年当院に転院を希望してかかり始められた飼い主さんの多くで、過去の病院で処方を受けていた期間が短すぎるのです。

それも、昔であれば、「もっと投与しなくてはいけないのは分かっているのですが、私がうっかりして」と言う答えが返ってくるのが、ここ最近の飼い主さんでは、4ヶ月間くらいの投与で十分であると理解されている方ばかりなのです。それも、毎年同じ期間しか予防していないのです。

勘違いされているケースも中にはありますが、近年出会う飼い主さん達は、本当に、ただ知らないだけなのです。

意図的にではなく、フィラリアの予防ってそんなものと思い、誰にもその間違いの知識を訂正してもらえていないのです。きちんと動物病院で処方を受けて、一度も何も言われないので、それで正しいと思っていらっしゃる方達ばかりなのです。それはとても怖いことです。

体重過多

肥満傾向もしくは、超肥満であっても、それを把握されていない飼い主さんにしばしば出会います。

なかなか飼い主さんに向かって、「この子、太っていますね」とは言いにくいものです。だから、多くの動物病院で、特に近年では言わない先生方が増えてきました。

ただ、当院では気がついたらまめにアドバイスするようにしていますので、関連疾患の発生率がとてもとても低いです。数年に1症例、出るか出ないか。

代診時代は出しゃばることも出来ず、そこまで言っていませんでしたが、当院開院当初から取り組むようになって、糖尿病の発生率が本当にビックリするほど、減りました。

飼い主さんに伝えることは、とても神経を使う作業

こうやって少しだけ例を挙げてみました。まだまだ、飼い主さんに伝えると嫌な顔をされるだろうなという項目はたくさんあります。そして、それをどうするか。

  • 「動物の健康管理のために、伝えなくては」と思うのか。
  • 「伝えた方が良いのだろうが、気分を害されるリスクを考えたら伝えない」という選択肢か。

悪者になっても動物たちの為に正しいことを発信するのか、病院に迷惑をかけないように黙るのか。

私も、とても悩みます。特に、初対面の方には、真意が伝わらないことが多々あり、気分を害されてしまう危険性が高いです。軽く伝え、何度かお目にかかって、話せるタイミングを見計らうことも。

でも、いずれにしても、ずっとかかっているのに言わないと言う事は、私の場合はありません。

フィラリアの予防も短い方にはきちんと伝えます。毎年正しい予防期間を啓発し修正しています。しかし、「あなたたちに、いちいち言われる筋合いは無い」と過去に言われた経験があり、そこまで言われたケースでは、さすがにその後は何も言わないようにしました。この方にこれ以上言っても、結局はどの病院に行っても同じ事なので、あきらめました。

言いにくいことを言わない今の時代

今、コミュニケーションの取り方がすごく難しくなっているなと実感します。だから、言いにくいことを言うのってすごく難しいです。

例えば、去年の予防がきちんと出来ていないことや、体重がどんどん増えていることを言わなくても診察は成立します。

ある意味、余計なお世話の部分かも知れません。

しかし獣医師はプロですから、この子が抱えているこれからのリスクを考えると、本来は見過ごすことが出来ないのです。飼い主さんにとって不利な内容であっても、動物たちに今後起きるかも知れない不利益を考えると、未然に防ぎたいと。

動物が好きすぎるから、飼い主さんに嫌な顔をされるかもしれないという辛さと闘いながら、ちゃんと伝えるという使命感を持って仕事をしています。

それは、ワクチン接種したりフィラリア予防したり、良質な食事を与えたりするようなことと同じで、予防していてもきちんとした予防が出来ていなかったり、健康管理が出来ていないと病気になってしまうリスクが高まるのは、分かることですよね。

近年では、獣医師に注意されないから、言われないから大丈夫と思ってしまうのも、間違った解釈かも知れません。危険です。

それは、言えない時代になったからです。

私たちの真意が伝わらず、怒って切れてしまう人が増えたからです。それでは、きちんとした診察さえ出来なくなるため、余計なアドバイスはしない方がよいし、飼い主さんが望んでいるかどうか分からないことを言ってトラブルになるなんて、本末転倒です。

現場では、医療の萎縮が起きてしまいます。

嫌なことを言う動物病院

飼い主にとって嫌なことを言う動物病院は、みなさんにとってどんな印象でしょうか。

やっぱり、心地よい動物病院の方が良いですよね。よくみなさまの言われる、「よい病院」「やさしい病院」とは、そう言う病院も多く含まれます。

でも、今まで書いた内容を読んで、私たちの言いたいことに共感して下さったのであれば・・・。

また、私たちも、どんな風に伝わるだろうとドキドキしながらも、この子の健康を守りたい一心で、声かけさせていただいていることを分かっていただけるのなら・・・。

一生懸命考えたつもりでも、それでも言葉足らずになってしまうこともあります。そんな時は落ち込みます。

獣医師や動物病院スタッフが、どれだけの思いを巡らせ、その一言を発信しているか想像していただけると、私たちの励みにもなり、すごく嬉しいです。

そして、言われたこと注意を受けたことを、自分のこととして一緒に考えて下さると、とてもありがたいです。私たち動物病院スタッフが、すべて解決してくれるのでは無くて。

小児科での口コミ

当院のスタッフが小児科にかかったときのこと。「どうたった」と聞くと、「先生に厳しく、『気づいてあげられるのはお母さんしかいないのだから』と言われた」と、少し落ち込んでいました。しかし、私は彼女に言いました。

私:「目の前の動物が、もっと早く来たら良かったのにと言う状態で、『仕方ないね』と言える?もちろん責めるわけでは無く、次からはもっと早く動いて欲しいって思うでしょ?それと同じじゃ無いの?」

スタッフ:「そうですよね。私もそう思います。私の周りのママ達は、あそこの先生はハッキリものを言うから嫌だって、評判やネットの口コミも悪いんですよ。」

私:「でも、先生だって言いたくないことを言ってくれていて、子供のことを思っているからこそ、言葉もきつくなってしまうんだよね。そう言う先生が本当にいい先生なのにね。世間の評価と、何が正しい医療なのか、本当に何が必要かは、異なるものだね」

こんな会話をしました。

動物病院でも同じ事なのかな思います。やさしいと言う言葉があふれています。でも、本当の優しさとは?よい口コミって?

世の中の多くの方が、こう言うことに対するストレス耐性が低くなってしまったので、私たちも萎縮して言えなくなってきています。気がつけば、きちんと伝えられなかったらどうしようと言ったリスクがありそうだという場合は、だんだん言わなくなり、飼い主さんにとって都合の悪いこと言わない獣医師動物看護師が増えてきました。

そのために私どもは、一つずつていねいに、絆を築いていきたいと思っています。

私たちの真意が伝わりやすく、飼い主さんに一緒に積極的に協力して、動物たちに向き合っていただくための環境作りのために。

怖い先生?なのかしら

こんな事を書くと、怖い先生って思われますよね。

私もこの記事を読み返すと、そう思われても仕方ないのかな?と思いますが、当院の飼い主さん達にその質問をすると、目をまん丸にして、「え?どこが怖いんですか???」と笑いながら、おっしゃいます。目の前にいるから怖いと言えないのでは無くて、和気あいあいとしています。お互い気軽に相談出来るようにと言うスタンスで、診察しています。

ちゃんと良いことは良い、ダメなことはダメと言って欲しい人と、手を取り合って向き合っていきたいです。大好きな動物たちの為に。

何を望みますか?

みなさんは、動物病院に何を望みますか?

  • 心地よさですか?
  • それとも、この子の健康を守るための

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