2018年10月28日(日)~2019年2月3日(日)までの間、集中的に獣医動物行動学のプラクティカルコースを受講し、さらに毎回課題提出をしました。
今やインターネットを通じて、アメリカの獣医行動学専門医の先生の講習を、ライブ配信で受けられる時代になったんですよね。すごく貴重な体験でした。
1年前は動物看護師さんも参加出来るベーシックセミナー(この時は修了証の制度は無かった)を受け、今回は獣医師専用のプラクティカルコースが新設されたので、一期生として参加しました。
私は一般診療の獣医師で、昼間は普通に病気の診療をしながらの受講と課題提出だったため、睡眠時間も削っての取り組みでしたが、すごく有意義な時間を過ごすことが出来ました。ライブでの配信だけで無く次の日からは録画でも見ることが出来たので、診療終了後に、夜に何度も見直して課題に取り組みました。
実践型の課題だったので、とてもよかったです。
内容
- 問診票
- 動画などから
生活環境、ボディーランゲージ、問題点などを読み取り、さらに良いところや現在はまだ問題になっていない点などもピックアップします。
そして、問題行動を引き起こす可能性のある病気の除外診断をし、問題行動の診断名を列挙し、どのように治療をすすめていくか、そして、その治療が上手くいかなかった場合、どのように修正したり対応するかなどを、具体的に答えるものでした。
講師
尾形 庭子先生
- 米国獣医行動学専門医
- 動物行動クリニックFAU
- 米国パデュー大学獣医行動科
Associate Professor, Animal Behavior
Purdue University College Veterinary Medicine
講習スケジュール 2018~2019年
- 第1回:10月28日(日)21:30~22:30 攻撃行動[前半]
- 第2回:11月11日(日)21:00~22:30 攻撃行動[後半]および課題①の解説
- 第3回:12月02日(日)21:00~22:30 不安や恐怖に関する行動 Part1
[前半] および課題②の解説(1~2日は、東京にローラさんのハズバンダリー・トレーニングの勉強会に行っていたので、後日録画配信で復習しました) - 第4回:12月16日(日)21:00~22:30 不安や恐怖に関する行動 Part1 [後半] および課題③の解説
- 第5回:01月06日(日)21:00~22:30 不安や恐怖に関する行動 Part2 [前半] および課題④の解説
- 第6回:01月20日(日)21:00~22:30 不安や恐怖に関する行動 Part2 [後半] および課題⑤の解説
- 02月03日(日)21:00~22:00 課題⑥の解説およびライブディスカッション
これらが後日録画で配信していただけたので、何度も見直し課題に取り組んだので、1日平均数時間を毎日、レポート作成と行動学の勉強をしていた感じでした。
評価
総合点は、93.8%でした。 (ちなみにこのコースの合格ラインは、60点だそうです。)
初めの頃はどのように答えて良いか分からず、また上手く伝えられなかったため減点が多く、1症例目は87.5%でした。 分かっていたのにちゃんと伝えられなかったなんて通用しませんもんね。だからその後は、提出枚数が制限された中で、可能な限り伝える努力をしました。
そして課題の解説を聞き、自分なりに診療の組み立て方などを整理整頓し、答えの精度を上げていくことで、それぞれ2症例目は97.5%、3症例目は96.25%の精度になり、先生からのコメントでも「良く出来ています」と書かれていることが増えました。内心、「え?出来てる???」って、半信半疑だったんですけどね(笑)
先生の想定より受講者のレベルが高い方が多かったそうで、特に3症例目(最後の症例)を出題される際は「グッとレベルを上げます。ついて来られていない先生方は申し訳ないです」と先生が楽しそうにニコニコされながらおっしゃって、「答えられない方は、二次診療を紹介するでも良いです。普段の診療でどう取り組むかやってみて下さい」という感じでした。「仮診断だけして、すぐに二次診療に紹介」と答えられた先生も正解です。自分の実力外のことをしたら減点という方式ですので、出来ないのに出来るつもりになるのではなく、自分の限界を知るのもこのレクチャーの目的だったので、それらの回答も正解になるのです。
ですがせっかくの講習なのでと、 私の出来る限りの治療の提案などをしチャレンジしてみました。身の程知らずと減点されることも承知の上でのチャレンジ。2症例目よりは点数が下がっていても難易度はかなり上がっているので、その中でこれだけ取れたのは自分でもビックリしました。そして足りなかった所を100%に近づけられるように、勉強していかなければなと思います。
特にボディランゲージの読み取りは、全てにおいて満点をもらえました。今まで経験的に他の獣医師と比べ、動物を怒らせてしまったりケガをするのが少ないのはなぜのかな?とぼんやり思っていたこと。それはこれらを無意識に読み取り、可能な限り嫌悪ストレスが、より少なくて済む方法を選択する努力をしていたこと。またそれらの経験をトレーニングの勉強会などに出ることで丁寧に一致させていけている成果だと思いました。読めるようになると、さらに精度が上がっていくことに喜びを覚えます。
しかしまだまだドッグトレーナーさんたちに比べると足元にも及びませんし、もちろん人間と同じ生き物相手ですから100%はあり得ません。こちらの思い過ごしも。その中で動物のことを可能な限り理解したいと思うので、なるべく彼らのサインを読み取れる努力は、今後もしていきたいなと思います。
修了証および成績
Distinctionでした。いわゆる秀・優・良・可の『優』に当たるそうです。
現場を想定して、けっこう攻めに攻めての Distinction だったので、自分自身では大満足です。
修了書がいただけると言うことでしたので、合格か不合格かだけと思っていたのですが、このように成績まで載せていただけて、とてもうれしいです。
スタートした当初は、合格すらもらえるか不安で、「不合格になった時、追試も可能ですか」と質問したくらいでしたが、そんな心配など無いくらいでした。
自己評価ってなかなか難しいので、こうやって評価していただけるとホッとし、ますますやる気につながります。
まとめ
これからも、これらの基礎的な診療技術を元に、さらに学術の蓄積と更新を行い、常に新しい科学に基づいた行動学の概念を、みなさんに伝えていける獣医師であり動物病院でありたいと思っております。
「昔、先生、こう言うことを言っていたでしょ?」と言われることもしばしばあります。科学は日々新しい概念が発見され、更新されていっています。新しい正しい概念をどんどんいっしょに取り入れていきましょう。動物との関わりもどんどん進化していっていますよ!!!
行動学が出来る動物病院に魅力を感じられる方は、まだまだ少ないかもしれませんね。でもこれから、動物の福祉を考え、動物とのコミュニケーションをもっともっと大切にする時代に成熟してきたら、きっと分かっていただけると思います。
《きっと分かっていただける》そんな時代が来ることを願っています。素敵な世界♡
行動学は、命を救う学問です。
飼い主さんと動物との関係が好ましくないと飼育放棄に至る場合もありますし、触れなかったり投薬出来なかったりすると、治療の選択肢も狭めてしまうのです。
私たちは獣医療を、今までの単なる治療に留まらせず、予防の徹底や早期発見・早期治療、また、動物たちとの関わりにおいて可能な限り治療の選択肢を狭めないために、行動学をベースにおいて一般診療に取り組んで参ります。
もう一度伝えたいと思います。
行動学を正しく理解しないと、治せる病気も治せないですし、救える命も救えないのです。
いっしょに学んで成長していきましょう。私たち清美どうぶつ病院スタッフ一同、日々学び、更新しています。
とっても楽しいハッピー・ペット・ライフが待っていますよ。
行動診療(問題行動の診察)を希望される方は、こちらも併せてご覧下さい
子犬・子猫を飼い始めたら、やるべき事:子犬子猫は飼いやすいのでは無く、この時期にすべき事がたくさんあり、ここでちゃんとするかしないかで、将来が変わります。子犬子猫から飼うメリットは、ここからトレーニングに介入出来ると言う事であり、何もしなくても飼えるという意味ではありません。
動物行動学をきちんと学んだ当院だからこそできる、ストレスの少ない診療や治療です。ストレスの少ない診療・治療をご覧下さい