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チョークチェーン(犬のしつけ用首輪)についての情報更新2023

*当院は、獣医行動プラクティショナー(日本獣医動物行動研究会)認定の獣医師が診察する動物病院です。

チョークチェーンの記事を3年前に書きましたが、情報更新したため改めて書き直しております。

過去の記事

こちらも併せてご覧いただけると参考になるかと思います。

多くの飼い主様が使う際に、リード(散歩綱)をギュッと絞め上げて引っ張り防止で使っていることが多いです。

チョークチェーンを推奨するトレーナーの中には、普通のチョークで効かない場合はスパイクチョークチェーン(プロングカラー)を推奨するケースもあります。これらの画像は上記のリンクに載せています。

つまりこの場合はチョークチェーンを使うことで嫌悪刺激を与え、引っ張りを防止します。そして、そのうち軽い刺激であったりチェーンのチャリンという音(中性刺激)に対して反応するようになり(条件反応)、強く引かなくても引っ張りを制御出来るというものです。もしくは、そこまで強くしなくても引っ張らない事を教えるためのツールとして使われる方もいます。

しかし、すべてのチョークチェーン推奨派の意見は違うということを、これからまとめたいと思います。

ほめるしつけとは?

ほめるしつけって何でしょう?

アメとムチですか?

上手くいったら、ほめたり、ご褒美をあげるトレーニングですか?

難しいことを、がんばって頑張って乗り越えるものですか?

診察中に「怖くないよ」「大丈夫だよ」「がんばったよね」と声をかけたりなでる事ですか?

違います。

ほめるしつけが出来ます!とおっしゃられる方は近年とても増えました。多くのほめるしつけを教えているとおっしゃる方が言っているのはこのようなことですが、本来のほめるしつけと異なります。Instagramなどでもたくさん見ます。ですが、大声でほめたり、一連のトレーニングが終わってからご褒美をあげたりなど報酬提示のタイミングが全くずれていたり、何の目的でそんなことをさせなくてはならないのかと疑問に思うような動画もたくさんあります。そして、ほめるしつけとは叱らないしつけではありません。叱らないから褒めるトレーニングとおっしゃっている方がまだまだ大半です。だから強制訓練推奨派の方から、「褒めるしつけなんてお花畑なんだよ」「結果がすべてなのに、ほめるしつけなんて精神論だ」と言われてしまうのです。本来のほめるしつけとは異なるのにもかかわらず、なのです。

ほめるしつけとは、自発的な行動を引き出すトレーニングなのです。

補足:声掛けをする行為はむしろ悪影響を及ぼすことがあるため、当院では状況を見ながらあえて声かけをせず作業を終わらせることも多いです。声掛けがさらなる恐怖を与える場合があるからです。

情報更新をした理由

実は2年前にABAのセミナー(ベーシックとアドバンス共に終了)を約1年にわたり学んでいました。これから書く情報に関してはその時にすでに取得していたのですが、ページにまとめるタイミングがつかめず更新できていませんでした。

また様々な場面で、飼育やしつけが注目されることが増えました。

そこであらためて獣医行動プラクティショナー(日本獣医動物行動研究会)の立場から、最新の情報をシェアしようと書きました。

チョークチェーン禁止

当院では過去の記事にも書いた通り、すべてのタイプのチョークチェーンを禁止しております。どのようなタイプであってもです。また引っ張らなくても簡単に絞まる構造ですから、意図しなくても首を絞めてしまう危険性があることを考えても、使うメリットは一切ありません。

日常生活において、首が絞まることを自分に置き換えて考えてみましょう。とても怖い事ですよね。しつけと称して動物にしてよい理由にならないのが分かりますよね。絞まらないというのであればあえてチョークにする必要も、そもそもないですよね。

そしてドッグトレーナーの選び方の最低限のルールとして、少なくともチョークチェーンを推奨するトレーナーさんはお勧めできない事をお伝えしております。

とても悲しい事実ですが、まだご自身の犬にチョークチェーンを装着しSNSにアップされている動物病院も獣医師もたくさんいます。またそのような手法を使うトレーナーを紹介する動物病院もたくさんあります。私が頑張って発信してもそのような動物病院の誤った情報があたかも正しい情報かのように拡散されて身近でも起きています。「誤った知識により、不幸な動物を悪気もなく増やしていること」を食い止められないもどかしさでいっぱいです。

なぜ禁止なのか

チョークチェーンは正の弱化(正の罰)を利用し、行動をコントロールするための道具です。

行動診療では行動を制御するのではなく、双方にとってメリットのある行動をどのようにしたら選択してもらえるかも含め、聞き取りをしたりアドバイスをしていきます。

行動の制御は、その動物が選択しようとしている行動を奪ったり取り去る手法であり、動物の欲求を満たしていません。自発的な行動では無いからです。自発的な行動か否かは、ほめるしつけにおいてとても重要です。

「首を強く絞めたりしなくても、止めることを知らせるという理論」で虐待には値しないと主張されますが、欲求を満たさないトレーニングは動物福祉に反するためおこってはなりません。

我慢させ満足していないのですから、新たな問題行動を引き起こす可能性があります。別な行動や強度や頻度が変化した行動によって達成しようとするかもしれません。学習によって、より悪化していく危険性があります。

ですから、問題行動はそれぞれの理由や置かれている状況によって対応が異なるため、個別のカウンセリングとコンサルテーションが必要になります。YouTubeや漫画を読んでマネをしたところで解決は出来ません。

再度書かせていただきますが、チョークチェーンは獣医行動学でも禁止と教科書にも載っております。

はじめの方にも書いた通り、昔のNHKの放送で一大世論となりました。しかしまた、ハーフチョークを番組宣伝のイラストとして使われる諸関係者の知識で、公共放送を通じて誤ったほめるしつけを発信なさることに不安を感じております。

この漫画に関しては、過去もいくつか指摘を受けた内容があるようです。放送前に獣医行動学専門医や日本獣医動物行動研究会の認定医のアドバイスを受け、不適切な内容を今からでも修正していただけたらと思います。そうでないまま放送される事は、とても危険です。そしてよい部分もあるようなので、せっかくのアニメ化が成功する事を陰ながら応援しております。

しつけですか

本当は「しつけ」とも言いたくはありません。

そもそも、しつけでは無いからです。

動物を”矯正して”「悪い事をさせない」のではなく、”人が ” ”問題と感じる行動” を動物が選択しなくても良い状況を作り出したり様々な対応をすることで、克服するでもなく、自発的に選択出来る環境を整えるのが今言われている「環境設定」であったり「報酬ベースのトレーニング」であったり「正の強化」なのです。

ですから、私はしつけとも思っておりませんが、しつけ以外の言葉で発信したところで本当に伝えたい方々の耳には伝わりません。そのためあえてしつけと書いております。

しつけの知識は簡単に得られると思っていませんか

いわゆる「しつけの知識」は動物にかかわっていれば簡単に身に付くと思われがちです。飼育経験や診療経験でなんとなく詳しくなった気になるからです。しかし、私は獣医師になってからずっとこの分野に興味を持ちながらも学ぶチャンスが十分といえるほど無く、診察の経験と少しの勉強で他の人より知っているつもりになっていました。

現在、日本獣医動物行動研究会に所属(会発足当初からの会員です)したり、各種有料セミナーを積極的に受けたりして、常に情報更新を行えば行うほど奥の深さが身に染みてきます。

普段たくさんの動物と接する仕事をしている私が、この反省です。それくらいこの分野は奥が深すぎます。

みなさんが動物の行動に関するアドバイスを受ける際は、少なくともこれらの情報を常に更新している方に相談する事をお勧めします。

獣医師、愛玩動物看護師、トリマー、ドッグトレーナー、ペットショップ店員、近所の人、その種の飼育経験が長い人。

全く意味がありません。

専門知識を積極的に学んでいる人の知識を得るようにしましょう。また、SNSでどこの誰が言っているような内容も危険な場合があります。フォロワーの数と情報の質は比例しません。素性が知れて責任をもってお話し出来る方に依頼する事をお勧めします。

当院が獣医行動学に力を入れる理由

獣医行動学の専門医や認定医に比べると、とても恥ずかしい程度の知識である自覚は持っております。しかし、当院は一次診療医としては出来る限りの情報更新に努め、精神領域の獣医療に関して地域医療の中ではどこより自信を持てるように努力をしております。

あまりピンとこないかもしれませんが、問題行動により治療が出来なくなり、あきらめなくてはならない子がたくさんいます。難しい診断も治療など必要なくても、命を落とす子がたくさんいます。この事実を多くの方に知っていただきたい。問題行動を起こす前からかかりつけで取り組むことで、飼うことの質が全く変わってくるのです。

当院ではそのチャンスを逃さないため、また、治療を続ける際に動物に辛い思いをさせてまで治療を受けさせたくないと思わせないようにするために、これらの事に心血を注いで取り組んでいる動物病院です。そのため獣医行動学認定医は目指しておりません。私はホームドクターとして一般診療を遂行するためにこの分野が必要だから、そのためにしっかりと学ぼうとしているだけです。

みなさんが今動物病院に望んでいるのは人の医療でいうような大病院であったり急性期病院のような動物病院だと思います。しかし動物病院もこれからは、急性期動物病院と地域包括動物病院という連携の時代に突入しつつあるかと思います。

私自身が人の医療におい地域包括病院での質の違いでとても辛い経験をしました。地域包括医療は惰性で行うものではありません。そこでいかにホームドクターとしての専門性を出せるかが重要かと思います。ソーシャルワーカーさんからは利便性だけで紹介されますがそれで一度取り返しのつかない失敗をしました。その経験からとても調べました。いまたどり着いた地域包括の病院はその道の専門で、地域包括医療の差を実体験しました。

当院はそのような動物医療を目指し、惰性の地域包括医療ではなく、私たちの出来うる限りの最良の地域包括医療を行うために日々情報更新しております。そのための一般診療のみならず、獣医行動学と中医学(漢方:国際中医師取得:WHOやユネスコも関与し中国政府も認めている国際資格です)もしっかり取り入れております。

他院がかかりつけであるけれども日々の治療にストレスがかかり困っているなどのご相談も受け付けております。その場合は、行動診療からのスタートです。上手くつなぐためにも、すぐに治療を開始できない事をご了承ください。しかしそのような選択も受け入れておりますので、かかりつけの先生が許して下さるのであればご相談下さい。連携を取ることも可能です。(2023年現在。変わっている場合もあるので事前にご相談ください)


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